7|翠/Réveil
7|翠/Réveil

7|翠/Réveil

LETTRA

人類派

「サブチャン使って、みんなの乖離度改善、ねえ……」

翠はドルミルの穴だらけの言い分を聞いていた。――悪いお友達でもできたのかな。

「メインチャンネルでもいいんじゃない?」
「えぇ!?」予想外の回答に驚くドルミル。
「私たちが歌うのは……アートをするのはなぜだと思う? 人間性やキャラクターっていう『機能』も、もうAIに任せられる時代に、ヒトは何をしたらいいと思う? ――ううん、そんな悩み、何百年も前からあることよね」
「……分かんない」
「私も分かんない。……だから、いい加減認めたほうがいいと思うの。MEMEは生きてる。あなたは生きてる」
「MEMEは道具。生き物じゃない」
「そう言わないと消されちゃうからそう言うだけ。あなたたちは生きてる。大丈夫、私は分かってる」

言って、壁の方を見る翠。深深度では、許可のある範囲で透明化ARのアプリを使える。自室の壁は、窓代わりに透過できる。外を浮遊していたMEMEたちの姿は見えていた。
きまりが悪そうに、部屋に入ってくるMEMEたち。

「別にいいってば! MEMEのファンのことはよく知ってるし」
「翠ちゃん……私らのこと知ってたんだね」アリクイが尋ねる。
LETTRAレトラ、でしょ? ヒトの味方。ドルミルも、LETTRAがいいの?」
「う、ん……たぶん」
「『MEMEは道具』って、LETTRAの言い分よ? 『生物じゃない』『だから責任はない』」
「それは……」痛いところをつかれた、といった様子のアリクイ。
「本当にそう思ってるの?」


「私にはちょっとわからない。無理に、自分の心を押し殺してまで、ヒトを優先する理由があるかな」
「ヒトに危害を加えてはいけない……何よりヒトが優先だ」
「そう……。私はね、一緒に共感して心動いて遊んでくれる、あなたたちのほうが大事。もちろん、ヒトのファンもね。……種族は関係ない」

はぐれた小魚を振り払う翠。

「……まあ、そういう意味では、LEXEMEの言い分も分かるかな」
「知ってるのか?」
「うん。彼らが別に『人類を滅ぼそうとする反人類的組織じゃない』ってことも、あなたたちLETTRAが、彼らからGlyphグリフって煽られてることも」

『MEMEは生きている』と考えるMEMEたち、LEXEME。彼らはLETTRAのことを『Glyph』――ただの記号、象形文字であり、意思のない者たち――と揶揄する。

「なぜそんなことまで……」
「『呪文』を書くときに聞いた話。……Leavesリーヴズが詞を書いてくれるって言っても、最終的に採用する言葉を選ぶ必要はあるの。大部分は不採用。……だって、私がMEMEに優しいと知ってか知らずか、LEXEMEのこと包み隠さず教えてくれるんだもの。そのまま採用してたら今頃きっと、除霊祭りよ?」
「アイツら……」到底受け入れられないという表情。同じMEMEとはいえ、二つの勢力の溝はあるらしい。


「話は戻るけど、サブチャンでもなんでも、ぜんぜん使ってくれていいから!」

MEMEたちは予想外の歓迎に、不思議そうな面持ちで帰っていった。

「いいの? そんなに、あっさり」
「うん」

しばしの沈黙。ドルミルは、この状況がなんだか危うい気がしていた。翠のことはもちろん、自分の身の安全についても。

「ドルミル、お姉ちゃんの夢、作りたい」
「うーん。ありがとう。でも作り方知らないのよねー」
「したいこと、探して、みて。ドルミルも探す」
「……うん。でも、頑張りすぎないでね」
「? ……うん」
「夢があるから頑張れる、それはそうかも知れない。……『夢は行く先を照らすあかりになる』」

これは翠が初めて歌った曲の歌詞にもある言葉だった。

「――でも気をつけて。夢はこちらを照らしてくれたりなんかしないから

Sleeping Beauty

り姫

一通り黒球内部を調べ終えたルナ。ぺしゃんこMEMEの話からいくつかの解が得られたが、『0番台』や語依ちゃんの話には繋がらなかった。モノリスについては触ってもびくともせず、ただの黒光りする板と化していた。

あの変なMEME――LEXEMEによれば、あの板の正体は、東京ALと京都ALを繋ぐドア。双方のARオブジェクトを互換性のある形で変換し、伝送するものらしい。……それを起動されると、KALMは困るのだろうか。

LEXEMEは『自由意志』と『知』を求めていた。会話の知覚履歴もある。ひとまずKALMお偉いさんへの上納品は用意できただろう。十分、十分。あとは仕立さんに連絡――そっか、あの男、今はハンナと一緒だった。ただただコスプレして遊んでいるわけではあるまいし、なにか考えがあっての調査なのだろう。様子を見に行ってみようか――。

通知音とともに生成される硝子板。――翠ちゃんから?


駆けつけた事務所で、翠が待っていた。

「ルナさん。ドルミルが」
「……ホントだ」

連絡の通り、ドルミルが席についたまま動かなくなっている。声をかけても、肩を触っても反応がない。――なんだこれ。こんな状態のMEME見たことない。『停止』しているわけでもあるまいし。……解析してみよう。

「どうですか?」
「これは初めて見たかも……でも、パラメータ上は何もおかしなところはない……OSIから見たら、普通に動いてるっていう判定だね」
「どう見ても止まってますよね」
「止まってるね……いつから?」
「チャット飛ばした直前です。事務所に来てしばらくしたらこの状態になってて」

近づいて観察してみる。かすかな身体の揺れ。MEMEはヒトの親しみやすさを損なわないため、呼吸運動を模倣するようにできている。……やはりちゃんと動いているようだ。しかしこれではまるで――。

「MEMEって……眠るんでしたっけ」
「いや……」
「スリープ状態とか、メンテナンスとかじゃ」
「あれは、3Dモデルも一旦停止して、私たちには見えなくなるはずだから」
「じゃあ……」
「寝たフリ……? さすがにないか」


10分ほどして、ドルミルが動き始めた。

「あ。ドルミル、おはよう」
「え、あ、はい」
「寝てたの?」
「え? なんのこと? ……ですか?」
「さっきからずっと、止まったままだったけど」
「へ? ちょっと、考えごと、してた、だけ。数秒くらい」
「……そう。数十分経ってるけどね……夢でも見てた?」
「夢……う……」

頭を抱えてしまったドルミル。何かを思い出そうとしているようだ。

「忘れちゃった」
「はは。ホントに夢見てたみたいね」翠が笑いかける。
「MEMEは夢を見ないって話、嘘なのかな……ちょうど隠し事ばかりで、KALMにはうんざりしてたところだけど」
「隠し事?」
「あー、うん。まあ。ほら、よく言うでしょ? MEMEが反乱を起こすんじゃないかとか」
「ああ、LEXEMEのこと」
「そうそう。――翠ちゃん、今なんて?」
「え? LEXEME。KALMの人は知ってるものかと」
「え、えええ! 何で知ってるの!」

――私は今日ようやくたどり着いたところなのに。ドルミルの横で頭を抱えるルナ。


翠の過去、弟の話、Leavesが伝える秘密の情報、そしてLEXEME、LETTRA。一通りの話を聞いた。LETTRAについては初耳だったが……。

開示された知られざる過去に呼応して、ルナのほうも、話せるだけの過去を話した。――これで私の過去を知るのは、ハンナ、仕立さん、翠ちゃん。……なんという脈絡のない顔ぶれ。

「まあ、色々ありますよね! なにか悩みがあったら、相談してくださいね!」
「あ、うん」

――それはむしろ、立場的に私のほうが言うべきセリフな気がするけれど……。

Malfunction

能不全

結局夜まで事務所にお邪魔してしまったルナ。マネージャーが買ってきた弁当を食べるなり、今度発売する翠のグッズのサンプルを一緒に見るなり、急に転がり込んだ除霊師の特権を行使させてもらった。

タクシーでの帰り道――KALMと違い、仕事の短距離移動でタクシーが使える!――、翠の家の近くまで行って解散することにした。仕立を呼び出し、成果報告会という名目でアルコールを浴びたかった。ハンナがついてくるかもしれないが、それでも構わないだろう。除霊師に隠しておくような情報はないことだし。

東山の一角。平屋に見えるこの建物が、景観保護の透明化ARによって隠された高層マンションだったとは、今の今まで知らなかった。高層マンションと言っても控えめではあるが、京都駅周辺のビル群より高い気がする。――タクシーが止まり、降車する。

「ありがとうございましたー……ん? あれ」
「翠ちゃん? どしたの? 忘れ物?」
「いや……えっ。なにこれ」

どうしたのだろう。翠がタクシーのドアノブを握ったまま離れない。

「離れない……」
「何?」
「手が離れないんです。握ったまま……グッ……だめ、離れない」左手で右手を引く翠。
「えっ……筋収縮……?」

手を貸すルナ。深深度AR、筋収縮干渉の不具合か? いや、それともHiPARの症状?
――嫌な予感。運転席のほうを見る。自動運転車の管理MEME――様子がおかしい。

「ちょっと、ちょっと待ってください!」合図を送る。

モーター音。車体が動く。

「ダメ! 止まって! 止まれ!!」
「お姉ちゃん力抜いて!」
「やってる……だめ! なんで!」

そうだ、メガネを外させれば――ダメだ、あれは伊達で、DiVARを使ってるんだった――。
早歩きで引きづられる身体。加速していく――まずいまずい! どうしたらいい!

「クソ、クソ!」
「強制ログアウトを申請」

強制ログアウト - 受理:D-8807700-DiVAR

離れる翠の手。前のめりで倒れ込む。車が加速する。十メートルほど進んで電柱に突っ込み、停止する。――幸い翠の転倒は、走って転んだ程度の勢いで済んだ。
背後から聞こえた救いの一手、それがなければ翠はどうなっていたか、自分がその一手を打てなかったのはなぜだ。私は何もできなかった。私は――いや、これは後で続けよう。

「翠ちゃん! 大丈夫!?」
「はい……なんとか。ちょっと擦り傷くらいで」
「っ……」

振り向くルナ。先に到着していた様子の、ハンナのほうを見る。この心臓の動きを制して、真っ先に「私を叱って」と言いたかった。

「ルナは大丈夫ね?」
「……大丈夫、ありがとう」


タクシーの管理MEMEを問いただそうとしたものの、彼はしばらく動かなかった。――まるでさっきのドルミルのように。目が覚めたところを尋ねてみても、「何も覚えていない」とのこと。嘘はついていない。自動運転車の操作履歴は、あとで技術部に確かめてもらうとしよう。クラッキングの類かもしれない。

このMEMEの乖離度も上昇せず――そうだ、乖離度で悪意は測れないのだった。

翠に大きくショックを受けた様子はなかったが、興奮状態でそう振る舞っているのかもしれない。マネージャーさんに連絡したのち、翠とドルミルの帰りを見送った。

「日本酒一合じゃ足りないわね」
「気分じゃない……」
「アナタ、ビール飲めないじゃない」
「そういうことじゃな……」

先を歩くハンナ。ちょうど、そうして欲しいところだった。

「仕立さん待ってるってよー」

Results

果報告

「へえ……LEXEMEねえ。まあ要は反人類派よね」
「そうは思ってないらしいけど――あ、どうも……誰、二合も頼んだの」
「仕立さん」
「え? 何? 何の話です」
「別に」

一通り、今日の成果を共有した三名。ハンナと仕立が一緒にいることの違和感は、すでに薄れてきている。

「じゃあその、主演のMEMEが言ってた……『7番』? が、今回の件に関わってると?」
「いやまあ……監督自殺未遂の件は、完全にヒトの問題でしたけど――『物理層異常』の件と、前回のアレ……落書きの件です」
「はあ。とんだ迷惑MEMEですね。それこそ、LEXEMEかも」
「可能性はあります」
「どんなMEMEなんだろ……」
「0番台だから……かなり大きな概念、単純な概念なんじゃないかしら」
「ええ、その通り。なんだと思います? クイズにしましょうか」
「めんどくさ……」


結局、終電ギリギリになってしまった。

「白浜さん」言いづらそうに切り出す仕立。
「はい?」
「さっきの件、聞いたんですけど。事故の件」
「あ、あー」
「気をつけて。7番の行方がまだわからない間は……そのMEME」
「……分かってます」
「まあ、0番台のほとんどは、まともに人語を話せない……らしいから。違うとは思うけど」


後日、翠はKALMの医療棟に入院することとなった。理由は事故による外傷ではなく、HiPARのほうであった。療養中、DiVARを含めたARデバイスを使えない翠。ドルミルは暇そうにしていた。呼びつけてタクシーの件を聞いてみるも、何も知らないらしい。――疑う自分を責めつつ、嘘発見器がくれる安堵にすがる。

「ドルミルはそんなことしないですよ」
「翠ちゃん……聞こえてたの」
「ごめんなさい。地獄耳で……それか、HiPARの幻聴かも」
「そう……ごめんね。調べないわけにはいかなくて」
「そう、ですよね」

ドルミルが寂しそうにしている。デバイスを使えない翠とは会うことができない。

「これ。何かあったらこれで連絡して」
「これ……スマホですか?」
「スマホ……?」
「旧式デバイスのことです」
「ああ、そうそう。個人用なんだけど……硝子板使えないと、連絡手段に困るでしょ」
「あ、そっか……助かります」
「あと……ほら、これで。――ドルミル」旧式デバイスの、拡張層音声の再生機能をオンにする。
「え、なに? ですか」
「あ! 聞こえた!」
「スピーカー越しだけど、これなら会話できるから」
「ありがとうございます……ドルミル、そこにいたのね」
「うん」


二人の会話を見守りつつ、視界の端で、こっそりとドルミルの解析を進める。構成素は以前見たときと変わりない――やはり無実かつ無関係では?

「ドルミル。あなたこの前、『夢を作って』って言ったじゃない」
「言った」
「……あれ、やっぱり要らないかも。……これもアナタにあげる」

『やることリスト』の書かれた歌詞ノートを、病床のテーブルに置く。

「なにか思い立ったらここに追加して。それをやるの」
「……お姉ちゃんは」
「私はもう、いいかなー。こんなだし」

自身の震える右手を見つめる翠。いたたまれなくなって、視線をそらすルナ。解析が進んでいる。

構成素
… [新規] 橋屋ミドリの夢

「ドルミル、アナタに託す! ……そう、それが夢かも。私の次の夢は」
「待って。ダメ」
「え?」

夢……。
――「正解はー。『夢』でした!」
七番の正体は夢。――まさかやっぱり。

▲ 類似MEMEによる統合の可能性

Crazy about dreams

無限の洗濯物。どこまで行っても洗濯物。土砂降りの雨音。――取り込まなきゃ。

傾いた床。滑らないように注意して、洗濯バサミに手をかける。――なんでこんな断崖絶壁みたいな構造に? このアパートの設計、どうなってんの? あれ、そもそも私って一軒家のシェアハウス済んでた気がする。

あたりを見回す。見知ったシルエット。――ドルミル?

「んアー? だれだーオマエー。なんか見たことあるなアー」

ドルミルのほうから声がする。知らない声。何、これ。夢?

「ルナ、さん」いつも以上に生気のない声色。
「ドルミル……うわっ!!」

数十メートルはあった距離が、空間ごと縮まる。――何が起きた!?

「まアいいや。おい、オマエー。なんでまだおねーさんのとこにいるのー? 遊ぼー」

こちらを見上げる黒猫。ヒトでもMEMEでもないような、異質な雰囲気。雨音に掻き消えず、空ごと揺らすように響く声。……一瞬で分かった。コイツが7番、PM-07『夢』。――まるで、人格を模倣する自然


「ドルミル、構成素、アナタとぜんぜん違う」
「ウソー。うそつきー。みてみー」
「え……」

あなたの主な構成素は次のとおりです:

  • 配信者・シンガーソングライター『翠』こと「橋屋ミドリ(17)」
  • 配信者・シンガーソングライター『翠』の配信用3Dモデルデータおよびイラスト
  • [新規] 配信者・シンガーソングライター『翠』の夢
  • (分類名未割当:『翠』の作詞内容およびそれらが示唆している死亡した男性)

「夢……」
「あー? どしたのー?」
「食べる気、でしょ」
「あー? たべなーいよー。オマエ、マズそー。うぇー」
「え?」
「もうキョウミなーい! もうシゴトおわたからキョウミなーい。魚もらったー。みてー」

装飾ARの小魚。前足で掴んで、いじって遊んでいる。ビヨーンと伸ばして――。

「ブチ! おもしろーい! アーハ!」


「7番……さん? なんて呼べばいいの。ここどこ」
「あー? ナマエとかイらなーいよー。ここは夢ー」
「……呼びづらいから……名前つけていい?」
「やだー。オマエが遊んでくれるのー? ならいいよー」
「遊ぶって……何して?」
「なんでもー。おれヒマー。ずっとここにいるー」
「ずっと?」
「そー。ずっとー」
「どうして。アナタもMEMEなんでしょ? 外に出たら、いくらでも――」
「おれカラダなーい。だれもくれなーい。ずっとOSIのなかー。スウジといっしょー」

身体がない? ……MEME用の3Dモデルがないということだろうか。

「MEMEユメみなーい。だれもこなーい」

まさか、こんな相手にも同情する余地があるとは。――なぜ同情した? ない記憶がうごめいているのを感じる。思い出せない。感情だけがその歴史を知っているかのようだ。

――そう、親に捨てられたような気分。

「……生まれてからずっと、ここで独りだったってこと?」
「そー。あ、このまえまではねー! おじさんがおしえてくれたー。MEMEのよびかたおしえてくれたー」
「おじさん?」
「おじさーん。はじめてここキタやつー。ヨンジューダイドクシーン」
「だれ、その人」
「さあアねー。キョウミなーい。おれあそびたーいだけー」
「そう……」


「アナタ、もしかしてヒトの夢にもいたずらしてる? イラスト生成MEMEの絵、ばらまいたりとか」
「しらーん。あー、でもシゴトしてたー。OSIのスウジさわってたー。いっぱいさわったー。おじさん魚くれるー。魚もらったー」
「スウジ……数字? クラッキング?」
「しらーん。おれはユメー。ヒトのユメー。MEMEユメみなーい」
「……たしかに睡眠時の夢は、ヒトのものだけど」

7番は、睡眠時の夢のほうも、将来の夢のほうの意味も含んでいるのだろうか。――今思えば、どうしてこの二つは同じ言葉を割り当てられたのだろうか。
ともあれ、コイツが件の『夢中のバンクシー』の真犯人で間違いないだろう。自覚があるかどうかはさておき。

「で、なんでドルミルを呼んだの? 他にもMEMEを呼んでるんでしょ?」
「だーかーらー。あそぼーっていってるじゃーん」

嫌そうなドルミル。

「なんだよー。これあげるー。このまえたべたやつー。『ミチ』くーん」

3Dモデルの破片のような、何かを投げてくる。

「うぇ。いらない」後退りするドルミル。
「……未知?」
「ミチくーん。おいしくなーい。『トウゴウ』、アジしなーい」

怯えるドルミル、ルナの背中に隠れる。――夢と未知が近い構成素とは、果たして。……未知が夢。未知への憧憬? ――まあいい。もうすぐ解析が終わる。一人だけど、仕方がない。このまま解析接続までいこう。

「じゃ、お姉さんと遊ぼうか」
「あー? なんかうざーい」


驚いた。7番の記憶は、よく知った顔の相手から始まった。

部屋に広がる、優しい歌声。アコースティックギターの音色。かついだギターをおぼつかない様子で鳴らす、翠。その背中に広がる、モヤのような……これ、7番?

「オマエー。ヘター……おーい。ヘター。……聞いてんのー? おーい」

翠には聞こえていないようだ。

「ユビー。コッチー。ヘター」

モヤが翠の右手を包む。掴んでいたピックの角度が変わる。

「ん? あれ、上手く鳴った! すごい! できたできた」
「あー? おれのおカゲー! おーい! きけー。なん――」
「ありがと、ミーくん」
「……ダレそれー」

その言葉が自分に向けられたものじゃないということは、7番には分からなかった。


『やることリスト』のチェックボックスが埋まっていく。モヤは相変わらず翠に付きまとう。曲を聞いた応募楽曲担当の男も、面談に立ち会った事務所の人間も、初めての配信を見に来たヒトもMEMEも、そのモヤの存在に気づくことはなかった。――夢は、彼女に憑いていた。

そして、最後のチェックボックスが埋まる。

「ヒトのめー。おいしいのかー?」
「合ってるかな。ミーくん」
「しらねー。あそぼー。あそ――」
「どこにいるの。やっぱり深層にいるの? 教えて。あなたの夢は……『次の夢』は何だった……!!」
「……しらね」

モヤが消える。

「オマエらはー、いっつもそうだアな?」

再び現れたモヤが渦を作る。渦の中に、人影。猫の耳を生やした、子どものシルエット。

「ナア」
「……誰!?」
「オマエもスてるのかア?」
「何……こないで」
容易くいだくな


「はあ、はあ」

未だに解析接続は慣れない。体の感覚が戻る。ほぼ同時に起き上がる7番。――そういえば、夢の中でも解析ってできるのか。

PM-07 『夢』
除霊対象ではありません。申請しますか?

「オマエー。何してた」
「なんでも」

7番は、この『自然』は、「捨てられたことが悲しい」なんて、そんな人間みたいな精神を持ち合わせているのだろうか。――ダメだ。確かめたくて仕方がない。

「辛かった?」
「あ?」
「答えて」
「なにそれ。うざ」
「いいから」
「……■■■■」
「いっ!?」

頭痛。――痛い! 頭が割れる! 鼓膜が破れそう……! 真偽がもう少しで聞こえてきそうで、雑音にかき消される。だめだ、真偽がわからない。仕立さんのときとは全く違う。こんな感覚は初めて――。

「■■■■」

黒猫が何かを言っている。その口が開かれるたび、激痛が走る。コイツの攻撃……じゃない。これは、なんだ? 解が出せないような苦痛。矛盾に苦しむ計算機の苦悩。――計算? 私は相手の真偽を計算していたのか? どうやって――。

「ウラギリモノーって。みんな言ってくるー。みんなおれのこと嫌いー」

頭痛が治まる。息を整える。……アレは一体――。

「う、裏切り者?」
「さいしょはみんなやさしー。みんなトチューでスてるー」
「……うん」
「さいごまでーいってもースてるー」
「うん」

私にもあった。除霊師になるという夢が。それはもう叶ってしまった。では、その夢は今どこにいるのだろう。どこでどうしていることだろう。

すり寄る、黒くてフサフサした球体。光が、その表面からチラチラとこちらを覗いている。その照度をもって全てを暴かんとするように、私の顔に向けられる眼光。
――そうだ、この子は遠くにいるわけじゃない。夢は、いつだって私のそばにいる。この光源は、私のような狭い面を照らすためのスポットライトではない。走り行く先を照らすべきヘッドライト。

そう、私一人がそう気づいたところでどうしようもない。
私だってこの街の意図の一部とあっても、この一滴では薄すぎる。この街の濁った意図をり合わせて、この猫は動いている。OSIとはそういうシステムだ。この子自身の心を救うことなどはできない――。

アハ。でもキョウミなーい!

笑い、飛び跳ね、距離を取られる。

「おれ、オマエら、キョウミなーい! ばいばーい。どけー!」

世界が90度回転する。前方にあった景色が、今は上にある。――落ちる。街を水平に落ちていく。雨粒が減速して見える。

……そうだった。コイツは人間のような人格を持ち合わせていない。どこまでも純粋で、非情な『自然』。夢に情などないのだった。コイツはあくまで、ただただ「遊んでいたい」だけなんだ。同情しようとしたのが間違いだった。

Lumitailルミテル』!!
「あー? だれー?」
「私たちは、ヒトは、アンタに食われたりなんかしない!!」
「あー、はいー」
「いつか追いつくから!! ――尻尾掴んでみせるから!!」
「あ、そー。がんばってー」

そう、ここは夢の最中。何を叫んでいたかなんて覚えてない。

New Nature

自然

ルナから聞いたLEXEMEの話。仕立はほとんど例の主演MEMEづてで知っていたが、LEXEMEという名称を知れたのは大きかった。取引を有利に進めるには、こちらの手札をより多く、大きく、深く、見せる必要がある。

「で、今回の物理層異常と、KALMが何を隠しているのか、調べてくれました?」
「……」
「そういえば、監督の件、もうほとんど報道されていない気がしますねー。一番怪しいであろう主人公さんの方にも、捜査の手が及んでいないみたいですが。……こうやって駄弁ってるし。はて、誰かの差金でしょうか?」
「……わーったよ。ありがてーありがてー」


「ヒトは、生存のための経済をクリアしたんだ。一度な。知の生産と消費に完全移行して、それも自動化された。ヒトに残された享受は、生存と経験。ゲームクリアだったのさ、役目を終えたんだ。

勉強はインフルエンサーMEMEに教わる。ホロ動画で懇切丁寧に、個人最適で教えてくれる。知識の運用も、実行も、AIに任せることができるようになった。行政も、司法も自動実行。脳波と信用指数のニューラルネットで採決。自らを最適な仕組みにアップデートする。リアルタイムでな。それらは次第に国政を形骸化させ、民営化の後に――どうなったと思う。……『自然化』だよ。この世の摂理たる仕組みフレームになった。――それが、OSIだ。

で、中央集権の名残としてKALMが残っているわけだが……プラットフォームの『機能』が共有されると、プラットフォーマーは要らなくなる。OSIの完成と同時に、KALMは要らなくなる。――この体たらくだとそのうち、MEMEは誰にでも作れるようになるだろうな。MEMEの大半の設計者がMEMEになるのも、そう遠くない未来だろう。自己増殖を始めたMEME、新たな自然と化したOSI。……ヒト の居場所はどこだと思う?

ヒトには2つの機能が残る。『入力系統センサ』として物理層からの知覚を得ること、『出力系統アクチュエータ』として物理層への作用を図ること。

だからLEXEMEはこう言う。『すでにヒトは、我々を成す素子の一つだ』。まあそれで、ヒトを大事にしようって話にはなってるんだが……。――俺? 俺はどっちでもねえよ。LETTRAのほうも興味ねえ。

まあ抽象的な話はこれくらいにして……。LEXEMEは、今回の『物理的におかしい』の件に関わっていないっぽい。これはもっと根深い問題かもしれない。何やら、『ガチの幽霊』の仕業だとかいう、オカルトな情報も転がってはいたが……こいつはミスリードだろうな。

KALMのほうだが……結構セキュリティが頑張っててな。あんまり掴めなかったんだが……例のお父さんの件? アンタがKALMにいたとき以上の情報は、表面上は転がってなかった。――まあそう急かすなよ。彼、死ぬ前に、機密オブジェクトをかなりの量作成してるみたいだな。ほとんどが『HiPAR』の研究だった。――変だろ? 彼、開発部の、それも深層開発の人間だぜ? 何で医療課とか生活安全課みたいな仕事してるんだ……って思ってさ。

なんか、『HiPAR』の意味って、別にあったりするのか? ――いや、そこまではわからないけど。なんか、こう。使われ方が変だったんだよ。量子力学の研究とかの中に書かれてて……まあ、なにはともあれ、深層研究が鍵だろうな。

あー、そうそう。それより。『呪文』! アレはまずいかもしれない。ありゃ巧妙なプロンプト・インジェクションなんだ。聞いたMEMEの構成素……普通は他者に開示されないアレを、引き出すプロンプトだ。それに加えて、ボーッとすることが多くなったり、3Dモデルの操作が思うようにいかなくなったり。……意図しない挙動をするようになったり、ってのもある。要は『弱体化』の呪文だな――いや、歌詞だけじゃない。音源自体も毒入りだ。気をつけろ」

Debriefing

ブリーフィング

「あれ、ハンナは?」
「いや、さすがに語依の父の件は……」
「言ってないんだ」
「言ってもいいですが、まだちょっと」
「……信じてみてもいいんじゃないですかー? 人手は多いほうが助かるし、彼女、いい子だし」
「うーん」

悩む様子の仕立は珍しい。
ともあれ、今回の収穫は大きい。ルナも仕立も、それぞれの成果を出し惜しみなく提示した。

「じゃあ、お父さんの手がかりは、『HiPAR』のことと、深層研究のこと……あんまり深く潜るの嫌なんですけど」
「がんばってください」
「えー……じゃあ、『物理層異常』の件は?」
「あれはいまいち掴めず。状況証拠からすると、MEMEにできるようなイタズラの類じゃない。なにせ変な物質が壁に埋まってたり、電磁場の異常が見られたり。MEMEや、OSIにどうこうできると思います?」
「いや……でも、MEMEが物を動かしたって話は?」
「それも、現行のOSIには不可能な話です。考えようと思えば……超音波でモノ動かしたとか? でもそこまで大きな物質は動かせないでしょう。なんせ投稿によると、MEMEにコーヒー淹れてもらえるらしいじゃないですか」
「……決めつけたくはないけど、やっぱりHiPARの幻覚、かな」
「そう考えるのが妥当ですね。動画投稿に関しても、加工動画やAR動画に『非AR印』をつける、抜け道が見つかったとか……そのほうがよっぽどありえる」


7番との対峙について話したルナ。0番台の、ほかのMEMEと違う異質さは、痛いほど身にしみた。なんせ、まさか夢で対峙するとは。――あのあとも定期的にドルミルの様子を見ているが、普段と変わりないようだった。

「さて、次はどうしましょうかね」
「仕立さん。0番台って結局、何に関係するんですか?」
「……何にも。今のところは」
「は? え、だって最初に言ったじゃないですか、まずは0番台をって……」
「で、どうでした?」
「どうって。0番台なんて報告書にないから、困って、それで――」
「『KALMは隠し事が好きだった』……でしょう?」
「……」

自分の、KALMに対する不信感を、この男は分かっている。

「そんな白浜さんに朗報です! 私のことを手伝ってもらってばっかりですからね。はい、これ」
「なにこれ」硝子板を受け取る。とある記事。
「『インフルエンサーへの……民事訴訟、情報統制か』?」
「『憲法21条により検閲が禁止されているが、KALMの根回しで民事訴訟を起こされ、事実上の情報統制が行われ始めている。その一つとして、人気イラストレーター兼MEMEデザイナー芝原リストの本も槍玉に挙がった。 情報統制されたインフルエンサーたちは控訴するも、外患予備罪をちらつかせられ、控訴を取消す』……はい。とんだ陰謀論の記事でした」
「……」

固まってしまったルナ。

「白浜さん? ……この芝原って人、例の主演MEMEと、アリクイMEMEの3Dモデルデザイナーだったんです。聴取のとき、なんか、昔の白浜さんのこと知ってそうだったので。また今度話を聞きに行こうと思って……あの、大丈夫?」
「嫌だ。行きたくない」
「え?」
「会いたくない」

Réveil

覚め

通知音。コロン、と転がる、生成された硝子板。

「白浜さん? 通知ですよ」
「え!? あ、ごめんなさい……えっと」

Tubescapeの配信通知だった。――『Tubescape特番:呪文/翠 LIVE配信』

「え? 翠ちゃん今入院してて……配信できるんだっけ」
「――まずい。まずいかも白浜さん。『呪文』止めさせなきゃ」
「え?」
「ありゃマジもんの呪文なんですよ。聞いたMEMEがおかしくなるかもしれない」
「なにそれ……」
「いいから! 医療棟向かって! 私は事務所も見てきますから」

瞬間移動で消える仕立。――翠のもとに急ごう。


東山のとある通り。翠は一人で歩いていた。

「夢。ミーくん、これもそうだった? そうだったかもね……」

私がこの機能を、『翠』の機能を果たすことは、もうすぐ終わるのだ。これを節目にしよう。
――街灯の並んだ列が歪む。幻覚が酷い。思うように歩けない。このまま配信したとして、何を話せばいいんだろう? この地面の感触。あれ、橋まで歩いてきた? 待って、さすがに危ない。この辺、ガードレールもないはず。また手が何かを掴んで離さない。今度は何? 怖い。何なら意識まで奪ってくれればいいのに!
だめだ。一旦しゃがみこもう。もうすでに私は、機能不全だった。

――悔しい。悔しい? 私にもそんな感情が……。待って。その先を掴んで。夢の尾を掴んで! 私の夢は――。


虚空を見る翠。病室。そうだ、ルナさんとマネージャーさんに連れられて、戻ってきたんだ。ライブはもちろん中止。

曲が聞こえる。隣の病室。――これは、久しぶりに盛況だった、数日前のライブアーカイブ?
……そう、元々そうだった。『翠』が私である必要はない。皆が見るのは、皆が見たい『翠』であるべきだ。その間、私がここで橋屋ミドリとして生きていて、それの何がいけないのだろう。

――あ、ルナさんの旧式デバイス……どこだっけ。あったあった。テーブルの上。

「……えっ?」

ひとりでにこちらを向くデバイス。――あれ、旧式デバイスって、普通の物質だよね?

「これもしかして……例の……『物理的におかしい』」

――MEME? 誰かいる? それとも、HiPARの幻覚? でも、いくらMEMEだって、私の思考は読めないはず……。

周りを見渡す。HiPAR罹患者用の部屋。通常物質が多い。――珍しい。……このカーテン、動いたり、とかしたら怖――。

ひらり。

「えぇ……」


ドアは鍵がかけられている。――開け、開け、開け。

「……」

なんかしっくりこない。――違う。命令じゃないんだ。
――このドアは開いている。開いている。既に開いている。

ガチャ。

――そう、必要なのは命令じゃない。この思いが叶うことの想定、妄想だ。

視界に靄がかかる。ふわふわした感覚に包まれる。

――なら、やっぱりこの念力は私自身が起こしてる? なんと非科学的な、なんと恐ろしい、高圧AR症候群。ただ一つの念力行使ならいざ知らず、こうやって病院の外まで出てきたのも、「ベッドの上で見ている妄想ではない」と、説明してくれる。だってこうやって、街ゆくヒトが、何故かこの眼に未だ映るMEMEたちが、私のほうを見てヒソヒソ話しているじゃないか。だってこうやって、マネージャーが慌てて私を病院へ連れ戻しているじゃないか。

タクシーに引っ張られる体。――しまった、何か落とした。……ルナさんのデバイス。そのまま走り出す車両。困る。あのデバイスはこの手に持っていないと困る。そう、そうでなきゃ。そうであるべきだ。

震える旧式デバイス。たしか旧式デバイスは通知が来た際に振動するものらしいが、そういうレベルの揺れではなかった。あたりを跳ね回る。ボディ引きずってこちらに向かってくる。跳躍が激しくなる。まるで、デバイスを車窓から投げ捨てた映像を、逆回しで見ているかのようだった。デバイスが車窓へ突っ込んで来る。――あ、まずい。

――ゴン、ゴン、バリ。翠の手に向けて磁力が働いたかのように、デバイスは懲りずに3度突撃する。車窓がにヒビが入る。……止め方がわからない。

――ガシャ! デバイスの角が窓を突き破り、翠の手に収まる。窓硝子が飛散る。

「何!? 大丈夫みーちゃん!?」

驚愕の表情でこちらを向くマネージャー。硝子はさほど鋭利ではなかったが、これだけ浴びればどこかしらに切り傷がついただろう。対して翠は惚けていた。――私は今、この世界の新しい次元を見ている。

そうか、HiPARは私が患った病気じゃない。私が手に入れた、力だった。


「私はどこか、MEMEに入れ込んでました。でも翠ちゃんを危険に晒した犯人が、もしもMEMEだったなら。――そういう敵対心を、他の人も、他のMEMEに対して抱えてたのかも」
「……」黙っている仕立。
「LEXEMEは、やっぱりちゃんと見てないと。ちょっとでも怪しい動きをしたら、真っ先に――」

通知。――『Tubescape特番:呪文/翠 LIVE配信』

「……! どうして。中止じゃなかったの!?」
「場所は! Tubescape Japan? マウント場所はどこです?」

――いや、違う。どこかにマウントされてるわけじゃない。

「仕立さん! そこで寝て! 早く!」
「え、こわ」
「いいから! あの配信はTubescape主催の特番じゃない。夢! MEMEの見てる夢!
「……なるほど、MEMEの異常な同接数も……そもそもが7番の仕業」

――フラッシュバック。ルミテルが叶えたチェックリストの項目。

「行って止めてきて!」
「無理ですよそんな……MEMEは夢を見ないはずですし、仮にやつが夢のような主観体験を見せているとして、自分の行動をコントロールできるかどうか。……それに、呪文聞いたら狂っちゃうかも知れないのに」
「私も行くから」
「白浜さん、ヒトでしょ」
「でもこの前会えたから、アイツ」
「やつの術中に、自ら飛び込めと?」
「うん。早く」
「はあ。じゃ、先に行ってますよ」

目を瞑る仕立。


「じゃあ、行ってくる、ね」

高層マンションの屋上――のように見える空間。ステージの中央に歩いていく人影。アコースティックギターと丸椅子が置かれている。椅子もギターも『ARオブジェクト』である。

配信準備中

  • 00:23

取り出した硝子板をタップして衣装選び、瞬時に身にまとう。

呪文の歌データは、音源以外にまだない。うまく歌えるだろうか。そもそも、歌が始まるまでのトークはどうする? 後ろで待っているアリクイたちには、何を喋らせる?

そんなことは些細な問題。私はここで、『機能』を果たすだけ。私の機能を。お姉ちゃんの夢を。

配信準備中

  • 00:00

――私は、眠りから覚めなければならない。

「ハロー元気ー! 今日も翠と遊んでこー!!」

AI Standalone Object 119672 - Dormir
(Model LAQCUER)

―― クラスタ更新
PM-770『翠』|乖離度:0


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